雪乃琥珀録

独り言とか

社会人三日目 私と殺人現場

今日は三日目の出勤でした。

だいぶ職場にも慣れて来て、みんなと和気藹々と過ごしています。

 

今日のお昼休みの議題は「貝印のカミソリの切れ味」でした。

その話題が始まる間にちょっと一服しに行っていたので肝心の内容を聞き逃し、ただ「貝印のカミソリが切れ味鋭すぎてやばいよね!」みたいなところから乱入したので、みんながなぜそんな話題になったのか聞いたところ、「洋服の毛玉取りにはカミソリがいいらしいんだけど、どのカミソリがいいんだろう?」というかなり平和な内容でした。よかった。

 

貝印のカミソリといえば、昔ながらの鉄製の作りで安全ガードも刃の部分を保護するカバーも紙製で、百均で五本入りぐらいのものが売っているとても時代遅れなカミソリなのですが、私は昨年まで自傷行為に愛用しまくった結果、エスカレートしすぎて五針ほど縫った苦い記憶が蘇ってくるばかりでなんともいえない気持ちになりました。(笑)

 

みんなが言っているのは「毛玉取りに使うにあたって最適なのではないか?」ということだったのですが、ブロンでキマっていた上にエスモカを服用していた私はかなり内心動揺を隠せませんでした・・・。

ラリった状態で「あああれね!私も愛用してる!(別の用途で)」とは言い出さなかったのでそれだけが救いだったけれど、昨年の夏に自傷行為がエスカレートしすぎた時期に五針ほど縫う結構深い傷を負っていた(今でもあとが鮮明に残っているくらいには)ので若干のトラウマがあり、家族や周囲の親しい人たちにはそう言ったものは私の周りから全面的に排除してもらっているくらい苦い記憶が蘇ってしまって終始作り笑いでごまかしていました。

 

「あ、貝印のあの超古典的なカミソリですよね!」とか余計なことを口走ってしまったのですが、皆さん誰も疑わずに「そうそう!あれ怖いよねー!!」とかってスルーしてくれたので、平和ボケありがとう・・・と神様に久々に感謝しました。

 

そういえば同期のTさんがずっと営業部署の上司の方の名前を勘違いしているのですが、私はその上司のEさんと仲が良いのもあり面白いのでそのままTさんに訂正をしないまま観察しています。

 

でもさすがにかわいそうになって来たので明日は、「あの人の苗字の読み方間違ってますよ」と教えてあげようと思います。

 

ちなみにこのTさん、年齢も教えてくれないし、前職とか過去の話を誰かに振られると急に無理にはぐらかしてくるので、余計にきになるんですよね。

同期ということもあって、今日たまたま二人でいる時間があったので聞いたのですが、どうやらざっくり解釈するとニートだったみたいで、それを隠したいみたいでした。

今までそういうのでいろんな人から嫌なことをたくさん言われていたのかなあと思うと悲しくなりました。

 

私は人生振り切って生きているし、誰に酷評されても自分のしていた水商売という仕事に誇りをもっているし、ここ半年間ぐらいほぼニートだったことも隠していないので、周りから「変ってる子」という印象で見られてはいるんですけど、職場が何しろみなさん温厚で優しいので、そんなこと負い目に感じないで、いつか話の流れでみんなに話して少しでも楽になって欲しいなって思いました。

 

人に話したせいでもしかしたら散々嫌な思いをして来たのかもしれないけど、少なくとも私はその人がどんな生き方をして来たとしても、極論をいえば何か悪いことをして服役していたとしても、その人の今が素敵だったら過去のことは過去のこと、今自分の目の前にいるこの人が本物だ、と思うタイプなので、同期は私たち二人だけだしいつか向こうから話してくれるくらい心を開ける関係になりたいな〜なんて思ってます。

 

過去のことをとやかく言っても、それだけがその人の現在、未来を決定するわけじゃないし、少なくともTさんは今働いていて、不慣れな仕事に一生懸命取り組んでいるのが

素人の私でもわかるので、本当に優しい良い人なんだろうな、と私は思います。

何でもかんでも過去にあったことを掘り返されて人格否定をされるのは私も慣れっこなので、ちょっとでも力になってあげたいなあなんて。年下なのに偉そうかもしれないけど、偏見を持たないで今のその人を見て自分なりに判断するタイプなので、そのうちもっと話が聞けたら良いな。

 

今日はちょっとだけ入社前のことを聞いて、それでもまだ少しはぐらかしていたのがバレバレだったのですが、昨日より少し話してくれるようになってくれて単純に嬉しかったです。

 

まぁ私が過去に関して特に包み隠さず質問されたら答える大雑把な性格だからかもしれないですけど(笑)

せっかく同期なんだし、これからもっと仲良く慣れたら良いな。

彼女は静岡から東京に出て来たばかりなので、仕事中以外はお友達と思ってくれたら嬉しいなあ・・・。相手がどう思ってるかはわからないですけどね(笑)

 

 

それで今日の本題です。私と殺人現場。

 

よく○○駅の線路に飛び込んで自殺、みたいのありますよね。

でも大概その場所に行ってももう何一つ面影はなくて、忘れ去られている場合が多いからあまり実感がわかないんですよ。

実際、誰だったかちょっと忘れちゃいましたけど、うちの最寄りの近所の駅で自殺したバンドマンもいるんですけど、(ちなみに私の高校の通学路でした)誰もそんなことは気にしてもないし覚えてもいないと思うんです。

だからそういう実感のない自殺現場じゃなくて、今回は殺人事件のあった場所に一人で会社帰りに立ち寄って見ました。

 

というのも、私は園子温監督の作品が好きでよく見ているんですけど、その中に「恋の罪」という実際の殺害事件を基にした作品があって、前々から気になってはいてもなかなか行く機会もなかったのですが、現在の職場からとても近いので自前に軽くリサーチして行って見ました。今年一番ミゾミゾしました。

 

映画でオマージュされているのは1997年に起こった「東電OL惨殺事件」という、おそらくかなり一時期は有名になった事件です。

私は事件当初まだ2、3歳だったので映画を見るまでは全く知らなかったのですが、渋谷区円山町16番地がその現場で、今の職場から歩いて3分くらいのところにあるんです。

 

それも、当時の建物がそのまま残っていて、何一つ変わっていないんです。

 

知らない人のために簡単に事件の概要を説明すると、東京電力という大手会社で初の女性幹部、つまりめっちゃエリートのOLの渡邊泰子さん(当時38歳)が円山町のアパートの101号室で絞殺されたという事件です。

 

彼女は慶応大学付属高校、慶応大学卒の超学歴のエリートさんでした。

しかし、彼女は上司と家族に恵まれず、昼間は大手のエリート幹部、夜は娼婦となり、どうにか自分の自我を保っていたのではないかと言われています。

 

また拒食症だったという情報もあり、おそらく自律神経がもう限界値に達していてものすごく辛い精神状態の中、会社では上司に嫌がらせを受け、家に帰っても仲の悪い母親と過ごさなければならず、心のやっと落ち着ける場所が「娼婦」という職業だったのかなと私は思います。

 

エリートとして育ち、エリート会社員を務めて収入に困っていたわけではなく、ただ単純に心の拠り所を求めてさまよっていたのだと思います。

 

そんな彼女は最初はホステスをしていたようですが、いつの間にか渋谷円山町で立ちんぼ娼婦をやるようになっていたと言います。

ホテヘルにも在籍していたようですが、個人でもやっていたようで、実際のところまだ犯人も特定に至っていないことが物語っているように、毎日複数人の男性に自分を女として買ってもらうことで漸く少し自分の居場所を作れていたのかな、なんて考えています。

 

この時間が大々的に取り上げられた理由は、「昼間は一流会社員でありながら、夜は娼婦として体を売っていた」という彼女の極端すぎる二面性にありました。

 

殺害されたのは円山町16丁目のアパートの101号室。

私はホラーは得意ではないのですが、なぜかこの殺害現場を見たくなったのです。

 

今日退社後、職場からおおよそ5分くらい歩きそのアパートへ向かいました。

こんなに緊張したのは本当に久しぶりでした。高揚感と恐怖と戦いながらも、あっという間に殺人現場に到着。向かいにはべらぼうに安い寂れたラブホテルが一軒あり、なぜかそのアパートの周辺には外国人の方ばかりがたむろしていました。

 

現在もその廃墟に近いアパートは存在していて、周りの建物は建て替えられていたりしているのに、そこのアパートだけは取り壊されずに今もそのまま残っていました。

 

まずは確認するためにアパートの周りをぐるっと2周ぐらい観察していました。

驚くべきことに、そのアパートの地下一階の居酒屋は何事もなかったかのように営業をしていました。

 

事件が起きた一階は2部屋、錆び切った階段を上がるとおそらく4部屋(ポストの数が四つだったので、上がってはいませんがおそらく・・・)

一階だけは地下と二階の玄関の裏口の方に通路がありました。

 

こんなに人生で緊張と不安が入り混じった高揚感はいつぶりだったか、思い出せません。

周りに人は殆ど誰もいなかったので、勇気を振り絞って一階の廊下へ入って見ると、入ってすぐ手前の部屋が102号室でドアノブはひねるタイプの古いものでした。

ガスのメーターも101、102とも回っている様子は殆どなく、人が住んでいる気配もなく、すりガラスの窓の向こうにはゴミの山のようなものが積まれていたんだと思います。荒らされていました。

まさに「廃アパート」という感じ。

恐る恐る102のドアノブをひねると、当然開きませんでした。よかったです。

 

そして本日の本題、101号室。

部屋の前には一輪の赤いバラが花瓶に添えてありました。

すりガラスのむこうには、電子レンジのようなものがあるのが確認できました。

そしてついにドアの前に立った時、これまでにないぐらい本当に恐怖を感じました。言葉では形容できないけれど、とにかく102の不気味さとは全く異なる異様な感じでいた。

 

事件があまりにも有名になりすぎたせいか、101号室のドアノブは番号式の暗証番号ロックに変わっていました。とは言ってもそれもだいぶ錆びていて古いものでした。

 

恐る恐る、もうこれが開いたらきっと私は中に入るだるうな、という妙な確信を持ちながらドアノブに手をかけて見ましたが、幸か不幸かちゃんと施錠されていました。

 

かつてここで、人が一人死んだんだな。

それもそう遠くない昔。

 

きっと取り壊されないのには理由があると思いました。

私は霊感とか全くないのですが、そのあまりの不気味さに友達に電話して一旦気を落ち着けるくらいには緊張しました。

 

ここまでしたのにまだ私の好奇心は止まらず、中を見て見たい、人が命を絶ったところを見て見たい。

変態的な趣味だとは思います。

大島てる(事故物件紹介サイト)を高校の時のバイト先の先輩に教えてもらって以来、たまにサイトを見ては近くの事故物件を探すのですが、ここまで大きな事件が起きた場所は初めて行きました。

 

面白半分で行くところではない、ということだけは本能で感じました。

多分いると思うんですけどね。渋谷だし。

 

実際に事件のことを色々調べて見て、この事件に興味を持つきっかけとなった「恋の罪」を見直すと、実際は絞殺だけれど映画ではバラバラの死体になっていること、被害者は東電のエリートではなく東京大学をモチーフにした大学の助教授(エリートという点では一致)にすり替わっているだけで、被害者の家族関係などは非常にわかりやすく再現されていたと感じました。

 

多分、自分と重なる部分があったからこんなに気になったのかな、なんて考えたりもします。

 

私はエリートではないけれど、エリートの家庭でエリートなるための教育を受け、今でこそ家に居場所があるけれど、学生の頃は家にも学校にも居場所がなく、被害者と同じように自律神経を壊し拒食症になり、自暴自棄になって、誰にでもいいから「私」という存在を認めてほしくて水商売をやり始めて、そこで漸く「自分は多少なりとも必要とされている」という実感を得られました。

 

同じことだったんじゃないかな、とも多います。

もし周りに少しでも彼女の異変に気付く人がいれば、彼女は娼婦で女としての自分を得る以外の方法もあっただろうし、今も生きていてくれたのではないか、なんてことばかり考えています。

 

自分の存在価値が頑張っても頑張っても認めて欲しい人に認めてもらえない時、人はよっぽど強くない限り、自分が認めて欲しい人が「自分」という存在を否定するたびに、その人の自我は崩壊していくもので、それを他者で保管するというか、結局は気休めなんですけど、彼女の場合娼婦としての自分を認めてくれる「お客」といる時間が一番心地いい時間だったんじゃないかな、そんな気がします。

 

きっとまたしばらくすればあの場所を見にいくんだろうな。

こんな廃墟アパートだけれど彼女にとっては唯一自分を認められる場所で、そしてその場所で殺された。

自分の体を差し出してまでも自分の存在価値を示してくれる人がいないと狂いそうなほど、限界だったんだろうな。

 

エリートだから幸せなわけじゃないし、貧しくてなんの取り柄もなかったとしても不幸なわけじゃない。

まだ日本の大半の人間は学力や目に見える何かで人を図る人が多いけれど、私は内面を見ることが一番の近道だってことを学べただけで、そういう人たちより恵まれているんだろう。

 

と、また長々乱文になってしまいまして、申し訳ございません・・・。

本日もブロン曜日なのでつい白熱してしまいました。

 

これから70年前に起きた、九州大学生体解剖事件の本を読もうと思います。

今日は気付いたらここに二時間も費やしていたので、大島てるを見て職場周辺をまた漁って見たいと思います。

 

ちなみに今月中旬に人生で初めて裁判の傍聴をしに行こうと思っているので、その日記もいずれ書こうと思います。

 

おやすみなさい。